DL/POホスファチジルコリンについて

DL/POホスファチジルコリンが認知機能を改善する

以前からホスファチジルコリンは脳に良い物質と言われてきました。
もともと自然界に存在するホスファチジルコリンは私達の細胞膜を構成している成分の一つであり、私たちの体内にも存在しています。当然、人体に悪い影響はありません。
西崎知之は様々な種類のホスファチジルコリンを研究する中で、分子構造の違いで2916通りある膨大な組み合わせを検証し、POホスファチジルコリンとDLホスファチジルコリンが認知機能に有効であることを発見しました。
POホスファチジルコリンの「PO」とはパルミチン酸とオレイン酸、DLホスファチジルコリンの「DL」とは2個(ダブル)のリノール酸のことです。
POホスファチジルコリンならびにDLホスファチジルコリンは、それぞれシナプス伝達長期抑圧現象(LTD)、シナプス伝達長期増強現象(LTP)を誘発し、学習・記憶機能を増強させる働きがあります。また、その代謝産物の一つであるオレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸は神経伝達物質(ドーパミン・グルタミン酸・GABA・セロトニンなど)の放出を促進する働きがあります。これらが、DL/POホスファチジルコリンの認知機能改善の主要なメカニズムになります。
POホスファチジルコリンとDLホスファチジルコリンは脳細胞内の酵素で分解されて、脳神経細胞にコリンと不飽和脂肪酸を届けます。
コリンはアセチルコリンの原料となり、不飽和脂肪酸は神経伝達物質の放出を刺激する作用と受容体反応、特にα7アセチルコリン受容体反応の増強作用を持っています。

POホスファチジルコリン・DLホスファチジルコリン- ヒト認知機能障害に対する改善効果(国内特許取得)

ホスファチジルコリンは生体内物質で細胞膜の構成成分の一つです。
ホスファチジルコリンは通常、1位(α位)に飽和脂肪酸、2 位(β位)に不飽和脂肪酸、3 位(γ位)にコリンが付いています。(図1)

図1 ホスファチジルコリンの構造

ホスファチジルコリンはホスフォリパーゼA2 を介して2 位(β位)で加水分解され、不飽和脂肪酸とリゾホスファチジルコリンが産生されます。(図2)

図2 ホスフォリパーゼA2 を介したホスファチジルコリンの代謝経路

また、ホスファチジルコリンはホスフォリパーゼD を介して3位(γ位)で加水分解され、コリンとホスファチジン酸が産生されます。

さらに、ホスファチジン酸はホスフォリパーゼA2 を介して2位(β位)で加水分解され、不飽和脂肪酸とリゾホスファチジン酸が産生されます。(図3)

図3 ホスフォリパーゼD/ホスフォリパーゼA2を介したホスファチジルコリンの代謝経路

コリンは認知機能を調節する神経伝達物質の一つであるアセチルコリンの原料になります。
現在、日本国内で唯一使用されている認知症治療薬である塩酸ドネペジル(アリセプト)は、アセチルコリンの分解を防ぎ、コリン作動性神経伝達を促進させる薬剤です。
また、コリンはα7 アセチリコリン受容体の活性化剤として作用します。

アラキドン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサ塩酸 (DHA)等の不飽和脂肪酸はタンパク質燐酸化酵素C (PKC) の活性化を通してα7 アセチリコリン受容体反応を増大し、神経伝達物質の放出を刺激することによってシナプス伝達長期増強現象 (LTP) を誘発します。
リゾホスファチジン酸、リゾホスファチジルコリンもPKC 活性化を通してα7 アセチリコリン受容体反応を増大します。
シナプス活動を評価する実験系において、強い電気刺激(高頻度刺激)を与えるとシナプス活動は基準値の150-200%にまで増強され、これが2 時間以上にわたってみられる現象をLTP といいます。
これに対して、弱い電気刺激(低頻度刺激)を与えるとシナプス活動は基準値の50%前後にまで減弱され、これが2 時間以上にわたってみられる現象をシナプス伝達長期抑圧現象 (LTD) といいます。(図4)

図4 LTPとLTD

図5 LTPとLTDの関係 LTPとLTDは学習・記憶の細胞モデルであり、LTPは学習に、LTDは記憶に関与すると思われます。(図5)

先端生体情報研究機構 監修