DLホスファチジルコリンについて
DL ホスファチジルコリンは1 位(α位)にリノール酸、2 位(β位)にリノール酸、3 位(γ位)にコリンが付いています。(図1)
α7アセチルコリン受容体をアフリカツメガエル卵母細胞膜に発現したモデルにおいて、DLホスファチジルコリンはα7
アセチルコリン受容体反応を増大しました。(図2)
ラットの脳(海馬)切片を用いたシナプス活動評価実験において、DLホスファチジルコリンはLTDを誘発しました。(図3)
これらの結果は、DLホスファチジルコリン自身がα7アセチルコリン受容体反応を増大し、LTPを誘発することを示しています。(文献1)
現在、認知機能改善作用が示唆されている脂質としてホスファチジルコリン以外にアラキドン酸、ドコサヘキサ塩酸 (DHA)、ホスファチジルセリン等があります。
この中で、ラットの学習障害に対してDLホスファチジルコリンに最も効果的な学習改善作用が認められました。(図5)
ホスファチジルセリン、DHAも僅かに学習障害を改善しましたが、アラキドン酸には学習改善作用が全く認められず、逆に学習障害を悪化させました。(図5)
これらの結果は、DLホスファチジルコリンがいずれの脂質よりも有効な認知機能改善作用を有することを示しています。
DLホスファチジルコリンの想定できる認知機能障害改善作用メカニズムとして以下のことが考えられます。
- DLホスファチジルコリンはそれ自身にα7 アセチルコリン受容体反応を増大し、LTPを誘発することにより学習障害を改善します。(文献2-5)
- DLホスファチジルコリンの加水分解を通して産生されるコリンはα7アセチルコリン受容体の活性化剤として働き、LTPを誘発することにより学習を改善します。(文献2-5)
また、コリンはアセチルコリンの原料となりコリン作動性神経伝達を促進することにより認知機能を改善します。 - DLホスファチジルコリンの加水分解を通して産生されるリノール酸はα7アセチルコリン受容体反応を増大し、LTPを誘発することにより学習を改善します。(文献6-12)
- DLホスファチジルコリンの加水分解を通して産生されるリゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジン酸はα7アセチルコリン受容体反応を増大し、LTPを誘発することにより学習を改善します。(文献13,14)
このようにDLホスファチジルコリンも認知機能障害、特に学習障害に対して非常に有望な改善剤であると思われます。
先端生体情報研究機構 監修